■慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準

「厚生労働省「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班」サイトより引用
http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/#hyou1


前提Ⅰ.
1. 6か月以上持続ないし再発を繰り返す疲労を認める(CFS診断に用いた評価期間の50%以上認める)

2. 病歴、身体所見、臨床検査(別表1-1)を精確に行い、慢性疲労をきたす疾患・病態を除外するか、経過観察する。また併存疾患を認める

ア)CFSを除外すべき主な器質的疾患・病態を別表1-2に示す
(但し、治療などにより病態が改善している場合は経過観察とし、1年間(がん、主な神経系 疾患、双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症などは5年間)以上にわたって疲労の原因とは考えられない状態が続いている場合は除外しない:例えばコントロール良好な内分泌・代謝疾患、睡眠障害など)
イ)A.下記の患者に対しては、当該病態が改善され、慢性疲労との因果関係が明確になるまで、 CFSの診断を保留にして経過を十分観察する
    (1) 治療薬長期服用者(抗アレルギー薬、降圧薬、睡眠薬など)
    (2) 肥満(BMI>40)
  B.下記の疾患については併存疾患として取り扱う
    (1) 気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害
    (2)線維筋痛症、過敏性腸症候群など機能性身体症候群に含まれる病態

前提Ⅱ.以上の検索によっても慢性疲労の原因が不明で、しかも下記の4項目を満たすとき
(1) この全身倦怠感は新しく発症したものであり、発症の時期が明確である
(2) 十分な休養をとっても回復しない
(3) 現在行っている仕事や生活習慣のせいではない
(4) 疲労・倦怠の程度は、PS(performance status:別表1-3)を用いて医師が評価し、3以上(疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事が出来ず休んでいる)のものとする

前提Ⅲ.下記の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上認めるとき
(1) 労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)
(2) 筋肉痛
(3) 多発性関節痛。腫脹はない
(4) 頭痛
(5) 咽頭痛
(6) 睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)
(7) 思考力・集中力低下
(以下の他覚的所見(3項目)は、医師が少なくとも1ヶ月以上の間隔をおいて2回認めること)
(8) 微熱
(9) 頚部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合)
(10)筋力低下

臨床症候によるCFS診断の判定
(1) 前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、を満たしたときCFSと診断する
(2) 感染症後の発病が明らかな場合は感染後CFSと診断する
(3) 気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、
   線維筋痛症などの併存疾患との関連を次のように分類する
   A群:併存疾患(病態)をもたないCFS
   B群: 経過中に併存疾患( 病態) をもつCFS
   C群: 発病と同時に併存疾患(病態)をもつCFS
   D群: 発病前から併存疾患(病態)をもつCFS
(4)前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合、特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察する



別表1-1. CFS診断に必要な最低限の臨床検査

(1) 尿検査
(2) 便潜血反応
(3) 血液一般検査(WBC、Hb、Ht、RBC、血小板、末梢血液像)
(4) CRP、赤沈(またはシアル酸)
(5) 血液生化学(TP、蛋白分画、TC、TG、AST、ALT、LD、γ-GT、BUN、Cr、尿酸、血清電解質、血糖)
(6) 甲状腺検査(TSH)
(7) 心電図
(8) 胸部単純X線撮影


別表1-2. 除外すべき主な器質的疾患・病態

(1) 臓器不全:(例;肺気腫、肝硬変、心不全、慢性腎不全など)
(2) 慢性感染症:(例;AIDS、B型肝炎、C型肝炎など)
(3) リウマチ性、および慢性炎症性疾患:(例;SLE、RA、Sjögren症候群、炎症性腸疾患、慢性膵炎など)
(4) 主な神経系疾患:(例;多発性硬化症、神経筋疾患、癲癇、あるいは疲労感を惹き起こすような薬剤を持続的に服用する疾患、後遺症をもつ頭部外傷など)
(5) 系統的治療を必要とする疾患:(例;臓器・骨髄移植、がん化学療法、脳・胸部・腹部・骨盤への放射線治療など)
(6) 主な内分泌・代謝疾患:(例;下垂体機能低下症、副腎不全、甲状腺疾患、糖尿病など)
(7) 原発性睡眠障害:睡眠時無呼吸、ナルコレプシーなど
(8) 双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症など


別表1-3. PS(performance status)による疲労・倦怠の程度

0:倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる
1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある
2:通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
3:全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
4:全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である
6:調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している
7:身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である
8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している
9:身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている


表2. CFS診断における補助的検査(客観的疲労評価)

1.身体活動量客観的評価機器から得られる睡眠時間 
カットオフ値:448.5分以上を陽性と判定 
(2~3Hzの加速度変化を閾値0.01G・rad/secで検知し、0をまたぐ加速度変化回数(ZC値)についてCole式を用いて睡眠・覚醒の判定を実施)

2.身体活動量客観的評価機器から得られる覚醒時平均活動量 
カットオフ値:アクティグラフ(AMI社)を使用した場合、ZC値189.7以下を陽性と判定  

3.心拍変動解析による自律神経機能評価(HFパワー値) 
 カットオフ値:  
  20歳代 365.9以下 
  30歳代 349.3以下 
  40歳代 250.0以下 
  50歳代 122.7以下 
  (心電図のRR間隔、加速度脈波のAA間隔の周波数解析より算出、年代ごとに評価し、上記のカットオフ値以下を陽性と判定)

4.単純計算課題評価 反応時間 
カットオフ値:1.217秒以上を陽性と判定 
(連続5分間コンピューター画面に表示された2つの数字の足し算を行い、回答に要した平均時間を算出、繰上げ有の結果のみを評価すること)

5.酸化ストレス評価:抗酸化力値(BAP) 
カットオフ値:2532.2μmol/L以下を陽性と判定 
(BAPテスト試薬(㈱ウイスマー)を用いて生化学自動分析装置により血液中の抗酸化力値(BAP:Biological Antioxidant Potential)を測定)

 客観的疲労評価によるCFSのレベル診断 
 上記5つの検査項目の該当数により、レベル0~4の評価を実施する 
(レベル0:全く該当項目が確認できないCFS、レベル1:1項目が確認できたCFS、レベル2:2項目が確認できたCFS、レベル3:3項目が確認できたCFS、レベル4:4項目以上が確認できたCFS)


○検査全般に関する注意事項○ 
*検査は基本午前中に実施する 
*検査前日の夕食後から絶飲食として早朝空腹時に検査を行うことが望ましいが、 少なくとも検査4時間前よりは絶飲食とする(ただし、常備薬内服と飲水はOK) 
*検査時には最終食事時間、採血実施時間を記録する 
*全ての検査を実施する場合、自律神経機能、単純計算課題、採血、身体活動量客観的評価機器の装着の順番とする 
*身体活動量客観的評価機器は睡眠時も含めて終日装着し(入浴時は除く)、睡眠時間と覚醒時平均活動量は、最低3日間の測定を行った結果を使用する 
*身体活動量客観的評価はアクティグラフ(AMI社)以外の機器を用いても構わない 
その場合、健常者とCFS患者を少なくとも30名ずつ比較し、研究班結果と同等の感度・特異度が得られるカットオフ値を設定して使用する 
*心拍変動解析による自律神経機能評価は、最低5分間の安静後に実施する 
*単純計算課題は、「できるだけ、速く、正確に答える必要がある」ことを被験者に説明して実施する


3 CFS患者 60名と健常者79名における補助的検査レベル評価

 健常者(79名)

 CFS(60名)

 レベル0個以上

79名(100.0%)

60名(100.0%)

 レベル1個以上

67名(84.8%)

60名(100.0%)

 レベル2個以上

41名(51.9%)

55名(91.7%)

 レベル3個以上

14名(17.7%)

37名(61.7%)

 レベル4個以上

0名 (0.0%)

25名(41.7%)